それもまた一つの選択
「まあ、色々とあって」

平野さんがどこか吹っ切れた様子で言おうとした時。

「お腹の子は俺の子だから」

門真さんの声が低く響いた。

「付き合ってすぐに出来た、というのはよくある話。
真由は身近な人だったし、そういう事もあってもおかしくないはず」

この人の淡々とした言葉、雰囲気は今まで私が見てきた人にはいないタイプだった。
柏原君とは全く違う。

「そうなんですか」

それが私の口から出た精一杯の言葉。

「…そういう事にしておいてくれる?」

門真さんは複雑な表情を浮かべているだろう私を見て苦笑いをした。

それって、お腹の子供の本当のお父さんは…。

「あ、ちょっとごめん」

平野さんがいきなり立ち上がってお手洗いに向かう。

まだ悪阻が酷いんだ!

私も慌てて立ち上がって平野さんを追いかけようとするけれど、こーちゃんが愚図り始めたので抱っこしてあやす。

「藤野君には真実を伝えてあるから奥さんにも言っておく。
真由のお腹の子は拓海の子供だよ」

切ない目をして視線を落とす門真さん。
思わずこーちゃんを抱いてる手に力が入った。

そんな切ない目…本当に望んだ結婚なの?

「拓海は俺にとって弟同然。
その拓海が死んでから子供が出来てるってわかって正直、倒れそうなくらい衝撃が走った。
けど、今後その拓海の子供が知らない男の子供になるのは嫌だった。
だから真由に結婚を申し込んだんだ」

…私には理解出来ない。

「門真さんは嫌じゃないんですか?」

鋭い目が私の言葉に反応して突き刺さる。
…怖い。

「俺が自分で選んだ人生だから…何も嫌な事は無い。
真由も俺に対してはそんな嫌な感情を持ってるようには思えなかった。
最初は受け入れられなくても、時間をかけてゆっくりと関係を築いていこうと思ったんだ」

平野さんが戻って来たので話は途切れた。

「ごめん〜」

手を合わせて謝る姿を見て門真さんと私は首を横に振った。

その後は他愛のない話をして終わった。
平野さんとは今後も連絡を取れるようにして。
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