それもまた一つの選択
「親がどうしても、と言うので来ました。
相手が今井のご令嬢、これ以上良いお話はない、と言って聞かない。
だからお断りされたら両親も諦めると思ったのです。
逆に苦しめる事になってごめんなさい」

この方が謝る必要なんて、何もない。
というか。
ここで応援しないと。
妊娠している彼女さんと上手くいって貰わないと。

「あのっ!私で良ければお手伝いします」

拓磨さんは頭に疑問符がいっぱい付いているような表情を浮かべていたが、

「多少、恥をかかせるような表現になるかもしれませんが…。
そこだけはご了承願います」

この方を助けられるかどうかで私とトキさんも上手くいくかどうかかかっている気がして。
どうにかしたい!



「お話、弾みました?」

今回のお見合いセッティングしてくださったお母様のお友達はニコニコ顔で私達に話しかけてくる。

が。

「ええ、よくお話させて頂きました。
私はこの場でお断りさせて頂きます」

私は深々と頭を下げた。

拓磨さんもお母様が付いて来られているから本当はやりたくない。
けれど、この方が彼女さんと結婚するには。

「どうして拓磨さんに大好きな女性がいらっしゃるのに…。
私と結婚させようとしたのですか」

まず、拓磨さんのお母様を見て、その後、お友達、お母様を見た。

「それが最善だからですよ。
お互いの家にとっても。結婚など、結局は家同士の結び付き。
遥も諦めて拓磨さんと婚約、結婚しなさい」

お母様の冷酷な言い方に感情が揺さぶられるが。

「出来ません。
拓磨さんの彼女、妊娠されています。
だから拓磨さんはその彼女に対して責任を取らないといけないのです」

「だから何?」

お母様はジロリ、と私を睨んだ。

「そんな事は何も問題ないわよ」

「じゃあ、私、この場で言われた事、マスコミにバラします」

と、取り出したのはボイスレコーダー。
こういう時の為に用意しておいて良かった。

「遥!」

ヒステリックな声が響いた。

「拓磨さん、彼女さんとお幸せに!
私は心から応援しております。
赤ちゃん産まれたら、一度抱っこさせてください。
私も将来の為に抱っこする練習をしたい」

と立ち上がって、部屋を出た。
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