それもまた一つの選択
その後、トキさんのお母様は落ち着いて、私達と色々と話をした。

近々、両家の顔合わせは必要だろう、とか。
式はどうする、入籍は?

「顔合わせは旅行から帰ってきたら遥のお父さんと話するよ。
入籍は遥の高校卒業の日に。
式、どうしよう?」

トキさん。
どうしようって言われても。
私は…。

「式なんて…よくわからない」

憧れとかもない。
お父様とお母様に連れて行かれた数々の結婚式は。
何ともつまらないものばかりで。
きっと、その時々の新郎新婦はキラキラと輝いていたのだろうけれど。
私には全てが灰色の世界だった。

「それはお腹が大きくなる前に考えよう」

トキさんは嬉しそうに俯く。
その俯いた姿が私は好きだった。
目を細めて俯くその角度とか…胸がキュンとなる。

「私、今日は遥ちゃんと寝る!!」

優貴ちゃんが私の手を取った。

「お兄ちゃんは端で寝て、一人で」

「なんで!?遥の隣は俺だ!!」

トキさんの必死な顔に思わず笑いそうになって堪える。

「こんなチャンス、滅多にない!!遥ちゃんにお兄ちゃんの欠点とかいっぱい教えるから!!」

「いや、いらないから!!」

兄妹喧嘩、中々面白い。
思わず笑ってしまうと優貴ちゃんも浩貴君も笑って

「今日、初めて遥ちゃんの笑顔を見たよ」

そう言われて緊張していたんだな、という事に気が付いた。



結局。

夜はトキさんが一番端で寝て、その隣に私、その隣に優貴ちゃん、その隣は浩貴君、トキさんと真逆の端にお母さん。

そういう並びで寝る事になった。

こんな風に寝るのは…修学旅行でしか経験がない。

「遥ちゃん、寝られる?ごめんなさいね、皆うるさくて」

お母さんに謝られると

「いえ…逆に嬉しいです。
私には兄弟姉妹がいないので。
こんな家族、いいなあって」

本当に羨ましいよ、トキさん。

「トキさんと結婚したら、こういう家庭が良いなあ。いっぱい、子供が欲しい」

「うわあ、遥ちゃん、お兄ちゃんにすごいプレッシャー掛けるね~」

なんて優貴ちゃんが茶化すと。

トキさんは顔を真っ赤にして目を丸くして私を見つめていた。
…ちょっと、トキさん。
可愛いんですけど。
そういうギャップ、本当にたまらない。
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