それもまた一つの選択
その方の後ろに付いて桜が満開の校門前を歩いていく。
駅からほど近い、子供向けのプラネタリウムに行くって言ってた。

…後ろ、付けられてるのが気になるけど。



プラネタリウム、初めてだって言ったら酷く驚かれた。

「星が好きなら絶対に見ておいた方が良いよ」

一瞬、立ち止まってチラッと私を見たその方の表情。

…心臓、バクバクしてる。



「楽しかったです!」

あっという間に時間は過ぎた。

心臓の音が聞こえるんじゃないかと緊張した。
しまくって実は今、クタクタ。
財布からお金をだそうとしたらその手を掴まれて倒れそうになる。

…そんな事もされた事はない。

「いいよ、これくらい」

…カッコいい。

あ、お礼はちゃんと言わないと。

「ありがとうございます。
でも、いつかはこのお礼、させてくださいね」

顔が赤くなるのが自分でもわかる。

「そういう機会があれば」

ようやくその方が手を離して腕時計を見る。

「もうそろそろ、帰らないといけないんじゃない?」

私も慌てて時計を見て、ヒイーって声を上げそうになった。

「あわわ!!」

早く電車に乗らないと!

あ!

足を止めて振り返る。

「あのっ!!」

その方が手をヒラヒラ振っていた。

「お名前教えてください!!」

目を丸くしたその方が言った名前は。

「藤野 都貴」

ふじの…とき。

「トキさん!!また月曜日、図書室で!!」

そう叫んで私は駅まで走った。

心臓壊れると思った、色んな意味で。
< 9 / 119 >

この作品をシェア

pagetop