まほろば

 クリスマスが終わるのと同時に、街はお正月に衣替えします、毎年思いますが、この素早い変わり身は、新しいお正月に夢中になって遊ぶ子供の、部屋の隅で転がっている古い玩具のクリスマスに似ている気がします。

 今年のクリスマスは、すこし違うのかなと携帯を眺めていました。
・・・いまどきガラケーって、どう思われたかな?・・・? あれ? 紀子、あなた何考えてるの・・・

私は、自慢じゃないけど妙子以外から好きって言われたことがありません。
・・・両親は言ってくれます・・・

でも、好きって言われたわけじゃないよね?・・・もし好きとか愛してる、なんて軽い言葉で言われたら携帯番号なんて教えません・・・

うぅぅん なんで教えてしまったんだろう? ベットに横になり携帯を開いて見ていました。・・・この場面なら、いきなり携帯が鳴って、アンは驚く場面かな。ダイアナ! 大変、これ音がして振るえている、捨てて逃げるよ! ダイアナと二人グリーンゲーブルズまで走るのでした。振り返ってダイアナを見ました、ハァハァとスカートを両手で引き上げ追いかけてきます。アン! 待って、わたし、もう無理。 ダイアナ! 私はここだよ・・・

私はダイアナが走る姿が可愛くて笑い出していました。

そうだ! お正月の計画を妙子と決めないと。

「妙子、今日も心の友は元気そうだね」私は、妙子に電話しました。

「紀子、イブの日はごめんね、いきなりで驚いたよね」

「大丈夫です、アンも元気だから」「お正月の話なのだけど」

「その話で、電話しようと思っていたところだったよ」

「心の友は、思うことも同じだね」・・・さすが、腹心の友は同じことを考えてるんだ・・・

「紀子は絶対にイヤって言うと思うけど・・・無理だよって話したんだけど、啓一が紀子と初詣に行きたいって頼んできたのよ」・・・? なにそれ・・・

「イヤ! なんで影と初詣しなけりゃならないわけ」・・・ありえない・・・

「そう言うと思って、啓一には無理だよと話したけど」
・・・妙子は結果が分かっていても聞いてくる人だからな、損な性分なのかな、そんなところも可愛いかな・・・

「ていうより、なぜ本人から電話なりメールしないわけ?」
・・・メルアドも渡したよね?・・・

「それも話したけど、番号押したけど、発信のボタンを押す勇気がでなかったらしいよ」・・・へぇ 見かけによらずシャイな影だったのか、シャイシャドウーだね、重ねると、シャイドウ? シャドウイ?・・・

私は笑えて来そうなのを堪えていた。

「紀子聞いてる? おぉ~い、紀子、戻ってきて」

「あ! ごめん、シャイシャドーの話はもういいよ」
「大晦日は、鳥居の前でいつもの時間ね」

「シャイシャドウって色が付いてきたの?」

「シャイでも影には色はないよ」「じゃね、バイバイ」

寒くなってきたかな、窓によりカーテンを少し開けてみました。

いつの間にか雪が降り積もっていました、もう少し早ければホワイトクリスマスだったのに・・・静かでした、窓を開けて雪に手を差し出しました。

雪はヒラヒラと静かに仲間の集まりに集つどってゆきます、雪の一片達が集まった仲間たちに、「こんにちは」「こんばんは」「さむいね」「はじめまして」思い思いの挨拶をしてゆきます、私の耳の中にカサカサと積もる音が静かに騒がしく響いていました。・・・ダイアナ、きっとグリーンゲーブルズに積もる雪も挨拶してるよ、それにね、アンは朝、玄関を開けたらあまりにも美しすぎて玄関から一歩も出れなくなっています。 だってダイアナ、こんなに綺麗で素敵なところに足跡など付けられないよ・・・
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