まほろば

 クリスマスイブに女二人に男が一人・・・
何だか、修羅場みたいな組み合わせかなと思っていました。

・・・きっと、どちらを選ぶのって、問い詰めているのかも。
「はっきり言いなさいよ、敬一、どちらが好みなの」? 違うな。「どちらを愛してるの」・・・? 愛は安っぽい表現ね。
「どちらが、貴方の心に住んでいるの」こちらの方がマシかな? もっと素敵な言葉はでてこないのかな、私には彼方だけしか居ないの?・・・なんか安っぽい・・・

「紀子? 聞いてる?」妙子は覗き込むように私の顔を見ていた。

「え! だから安っ・・・で? どうすればいいの?」

「また、まほろばの国にいってきたのね」妙子は、笑って話しました。
「アンは、どんな物語に居たの?」

「アンは居なかったけど、貴方しかいないって・・・」・・・しまった! 妙子だけじゃなかった、どうしよう・・・穴があったら入りたい。

「彼方って? どんな状況の話なの」

「だから、貴女ってことよ・・・」「そんなに、たいした話ではないから」・・・うぁあ、マジでやらかしちゃった・・・なんで?この影ここに居るのよ・・・
「ところで、妙子、敬一さんでしたね、敬一さんは、なぜここに居るの」・・・話を変えなければ。

「やっぱり聞いてなかったんだ」妙子は笑いながら、もう一度話してくれました。
「面倒なので簡単に話ね、夏休みに戻った時に紀子が私と話してるのを聞いていて、楽しそうな人なので紹介してって言われてたのだけど、機会が無くて今日になったわけ」「以上!」と妙子はスラスラっと話しました。

「葛城妙子の友達の櫻ノ宮紀子、高校の二年です、趣味は空想・・・?特技かもしれません、夢は、まほろばの国に住むことです」と自己紹介をしました。

「紀子さんは、やっぱり楽しい人ですね」と敬一が言うのを見てしまいました。「まほろばって、どういう国なのですか」

「まほろば・・・は国ではありません、言うなれば私の、聖域です、色のない人は踏み込めない私の聖域なのです」

「色が無い人は入れないのですか? 僕は何色ですか?」

「敬一さんは、影です・・・色が付く実体が無い感じでしょうか」・・・私、何言ってるの・・・

「そうですよね、実体が無ければ色も付きませんよね、なるほど紀子さんには僕はまだ、実体が無い存在だということになりますね」敬一は冷静に静かに話した。
「僕も自己紹介しますね、大学三年で、経営学を学んでいます、卒業したら地元に戻り家業の旅館を継ぐつもりでいます」「旅行が好きです、貧乏学生なのでバイトしてお金が貯まったら、色々な所に行き、旅館に泊まり勉強と観光という実益を兼ねた趣味です」

「旅行が趣味ですか、将来のことも考えられてるのですね、すごいです、私もよくグリーンゲーブルズへは出かけますよ」・・・? 何か馬鹿なこといったかも・・・

「グリーンゲーブルズは・・・赤毛のアンの家でしたね、カナダですね、一度は行ってみたいです、アンを育てた自然が見てみたいものです」・・・真面目に答えないでよ・・・そこは笑うところです・・・

「赤毛のアンを知っているのですね、妙子は腹心の友です」

「腹心の友ですか、羨ましいと思います、なかなかそこまで言い切れる友人なんて作れませんよ」

「紀子さん」

「はい」・・・なに?この雰囲気・・・

「紀子さんと僕は腹心の友になれると思いますか?」

「ふくしんの・・・ですか・・・どうなのでしょうか」・・・これって?もしかして・・・そうなのかな?・・・
「敬一さんも、まほろばに住みたいのですか?」

「紀子さんのまほろばに、住むことは出来るのでしょうか?」・・・ビンゴじゃないの・・・どうするの紀子・・・
「僕には、まだ色が付いていませんか?」

「はい、まだ私には影に見えます」

「まだ、ですか、紀子さんメルアド交換してください」

私にとっては、アメージング イブでした。
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