婚約指輪
入学
空を見上げる。
今日は小学生の時からずっと憧れていた糸羽高校の入学式だ。
この高校には同じ中学の人は居ないし、地元から二時間かかる場所だから知り合いも居ない。今日から高校デビューだ。

「生徒起立。今日はー…」
講堂に響く校長の声。胸がどくどくと音を立てこれからの高校生活に期待をしている自分がいる。だけど、
「(うわー。まだ誰とも話せてない。)」
校長の話も生徒代表挨拶もなにも頭に入らないままあっという間に入学式は終わり教室に入った。
席につくと皆既に友達を沢山作っていた。
「(早く友達作らなきゃ)」
出遅れた私を誰も待つこともなく時間が過ぎていく。
「はい。1年A組の皆さん、おはようございます。担任の石田です。えー、皆さんとの1年を楽しんで行きたいと思ってますのでよろしくお願いをます。それではー…」
担任の石田は生徒一人一人の名前を読みにくそうに呼び初め、くせっ毛の自分の髪をくしゃくしゃと掻いた。
「えー、1008 相ザワ香澄さん。」
私は心の中でそこで間違えるかと思いながら返事をした。
「はい。相崎です、よろしくお願いします。」
幼い頃から人見知りの私は高校入学一日目にして誰にも話しかけられずじまいで終わろうとしていた。
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