婚約指輪
突然の訪問者
「はい。それでは初日のホームルームを終わりにしたいと思います。号令。」
石田先生はクラスで一番背の高くて明るい磯谷晃生を指名した。
「俺、号令係じゃないんだけどー。」
と文句を言いながらも大きい声でハッキリと号令をかけた。
「(あー。一日目終わっちゃったよ〜)」
私が席でだらんとしているとA組のクラスの廊下に背が高い私服の男2人が歩いてきた。クラスの女子がカッコイイやらタイプなんだけど〜とか言ってる声が聞こえてきた。
私が座っている席から外の男2人が見えた。1人はモデル体型の180センチくらいで髪をまばらに茶色く染めていてツンとした顔立ちをしていて、もう1人はいかにも運動系の体型で真っ黒な髪がさらさらとしている。
ぼーっと眺めていると真っ黒な髪の男が私のクラスの原歩奈に話しかけていた。
原はニヤニヤと口角をあげながら会釈をして教室のドアを開けた。
「はぁ。」
何故か浅いため息が出てきた。
原は名簿を見てキョロキョロしながら人を探しているように見えた。
「あっ!」
原は私と目が合うと飛びっきりの笑顔でやってきて言った。
「ねね!相崎さん?だよね?」
「あ、う、うん。」
原は私の腕を掴んで引いた。
「え、何??」
「相崎さん先輩からのお呼び出しでーす!」
「はい??」
原に引かれるがままに付いていくとさっきの男2人が待っていた。
「君、相崎さん?」
茶髪は少ししゃがんで私の顔を覗いた。
身長が150センチしかない私は人見知りもあって小さく、そうですが、と答えた。
茶髪はパッと笑って隣の真っ黒な髪の綺麗な男の肩を叩いた。
「宮澤〜、相崎ちゃんビビってるよ?どーすんの?」
「どーするって康樹がビビらしてんだろ〜」
黒髪は猫を見るような目線で私を見た。
「ごめんな。こいつ怖いやつじゃないからさ。お願い聞いてやってくんない?」
私は戸惑いながら唖然と原に目をやった。
原は相変わらずの綺麗な笑顔を見せて首を傾げた。
「あのさー、こんな知らない人にいきなり言われんの怖いだろーけどさー」
茶髪は照れくさそうに笑った。
「こいつ相崎ちゃんと仲良くなりたいんだってさ」
黒髪は茶髪の肩を押して笑った。
「…。え?」
私は状況を把握出来ずで苦笑いした。
「あ、はい。」
茶髪はまたも照れくさそうに口元を隠して笑った。
「ありがとう。LINE貰いたいんだけどー…。いい?」
「大丈夫ですよ?」
「よっしゃ!ありがとう。」
茶髪は嬉しそうに携帯を出して私のLINEを受け取った。
私は多分この時なにも考えていなかったと思う。これからどうなるかも…。
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