囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「よし、条件を追加しよう」

珈琲も飲み終わり、ご馳走さまと手を合わせた彰貴さんは
口元をナプキンで拭いながら話し始めた

「は、はい」

何を言われるのだろうとドキドキしていたら…

「朝食は那寿奈が作る…そして一緒に食べる」

私に優しい条件を出された…

「…いいんですか?私も」

私はあくまでも偽物の婚約者、仮の同居人なのに…

「一緒に住むんだし…良いだろう?夜は残業や会食があったりして中々時間も決められないからな
…朝なら大抵この時間は家にいるから旨いもの食べられるなら有難い
いいか?朝食作りを担当してもらっても…」

彰貴さんは旨いものと言ってくれた

(あんなに簡単なもので…)

「はい。凝ったものは作れませんが、味は外さないようにします…ちなみに苦手なものございますか?」

「長ネギは苦手だな…辛みがどうも…」

その言葉にびっくりしてしまう

(あ、もしかしてさっき止まったのは…ネギを見つけたから?)

「でもさっきのは旨かった…だからたぶん…那寿奈が作ったら何でもイケそうな気がするのは言い過ぎか?」

…そう言われて嫌な気がする人は居ないだろう

「善処します…」

こうして二人の同居が始まった

なぜ、
婚約者のフリが必要なのか?
あの美女に叩かれていたのか?

…なぜ、私を選んだのか?

それは分からないままだったけれど…





鍵を渡され、先に出てしまった彰貴さんから遅れること30分
身支度をして外に出ると玄関の扉の前で
運転手らしき男性が恭しく頭を垂れていて
…びっくりして後退りをしてしまう

「おはようございます、那寿奈さま」

「お、お、お早うございます…あのよろしくお願いします…えと、あの、お名前は?」

挨拶をしたくて訪ねると運転手は不思議そうな顔をしてから、頷き…徐に胸のネームプレートを見せてくれた

「左東(さとう)と申します」

年の頃は両親と同じくらいだろうか?50代…かなという男性で黒に見える深い緑色のスーツを着ていた
少し細い目と丸い鼻がキツイようにも優しいようにも見えるし、下がった口角から気むずかしいのかな?と見える

プレートをカチャリと戻した手には
真っ白な手袋がはめられいる

「では改めまして、左東さん月島那寿奈と申します。あの、『さま』はいらないので……せめて『さん』で呼んで頂けますか?…どうぞ宜しくお願い致します」

『さま』はさすがに気恥ずかしくて…
左東さんの仕事を尊重した上での譲歩案…これなら飲んで貰えるかな?

「はぁ…畏まりました…那寿奈さん…」

少し困ったように笑ってから左東さんは表情を戻してそう答えてくれた

「有り難うございます」

では参りましょうと
勤務先のホテルまでつれていってくれた

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