囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
家に着くと黄色い扉の中へ入り…ボストンバッグを開く

中には肌触りのよいモコモコしたルームウェアや
奥には布にきちんと包まれた新品の下着まで入っていた
丁寧に用意した感じがする

きっと左東さんの奥様は丁寧な方なのだろう

下着は水通して、軽く自分もシャワーを浴びて
…着替えはそのまま使わせて貰うことにした

夕食を作ろうと部屋を出ると彰貴さんが帰宅してきた

「おかえりなさい彰貴さん…」

声をかけると彰貴さんはびっくりして目を見開いた

「ただいま…那寿奈…その服…」

「あ、左東さんにご用意して頂きました」

上から下までスッと視線を走らせてから
彰貴さんは唇を緩めた

「フフ…ウサギみたいだな…」

「え?!」

「いや、何でもない…」

一瞬、優しい顔に見えたのに…すぐに冷たい顔になった

「あの…彰貴さん」

「なんだ?」

去っていこうとした背中に何となく話しかける
とても疲れて見えたから…

「お仕事、お疲れ様でした」

「…あ…うん…那寿奈もな?」

少し戸惑ったような顔をして、そのまま彰貴さんは水色の扉の向こうに消えた

キッチンで食材を確認すると…

(うわ…すごい)

大きな冷蔵庫のなかにはあれこれ入っていた

そして、ご丁寧に食材のリストが冷蔵庫の扉に貼られていたのでそれに目を通してメニューを考えた

自分では中々買えなかった食材が色々と揃っていたので
イカと里芋の煮物と…豚汁を作った

(具だくさん!万歳!!)

張り切って作りすぎてしまい…

(どうしよう…冷蔵庫で保管して明日も食べようかな)

と考えていたら、彰貴さんがキッチンにやってきた

「イイ匂いだな…」

冷蔵庫から何やら出した彰貴さんが呟く

「…あの…召し上がりますか?」

「いいのか?」

彰貴さんが手にしていたのはビール…それを見ておつまみになるかなと思ったのだ

「よろしければ…アテになるかなと…」

恐る恐る声をかけると…彰貴さんが唇を少し引き上げた

「あぁ…もらえるか?」

少し柔らかい声に私は大きく頷く

「はい!今、用意致しますね!」

お仕事では冷酷…なのかもしれないけれど
そんな風には見えないのは…

まだよく、この人を知らないからだろうか…
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