囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
ビックリしてタオルから顔を離すと彰貴さんの柑橘系の香りが鼻腔を抜けた…

(え…?)

そのまま固まっていると…
またしても私は抱き上げられて水色の部屋に入ってしまう

一言も発しない彰貴さん

ストン…薄暗い部屋のたぶんベッドの上に下ろされると
そのまま腕が私の腰を抱き寄せる

もぞもぞとした動きはあっても…特に抱き締める腕以外は何もない

頭の上にはスースーと言う気持ち良さそうな寝息

(また?!)

驚いたけれど…昨夜も何もなかった事が安心感に繋がったのか
そのまま…温かいぬくもりに瞼が落ちていくのを止められなかった






「んんん…」

自分の声で意識が戻ると…辺りが明るくなっていて
ゆるゆると意識と身体が目覚めていく

ぼんやりした視界に見えたのは黄色いブランケット

そして、可愛らしい白いレースがあしらわれた黄色いカーテンクリーム色の壁

なぜかまた、私はここに寝ていた

(昨夜は確かに水色の部屋に居た筈なのに)

全く前の日と同じ状況…
時計を見れば6時少し前、先に目覚めようと早めに部屋を出たが、今日も既にソファーに彰貴さんが座っていた

黒の太いフレームの眼鏡を掛けて熱心に新聞を読んでいる…

「お早うございます彰貴さん…」

「ああ、おはよう」

こちらにチラリと流した視線が気だるくて
色気が駄々漏れな上に眼鏡姿も・・・高い鼻が際立って美しくてドキドキしてしまう…

(し、心臓に悪い)

「体調いかがですか?」

「すこぶる元気だが?」

「畏まりました……すぐ朝食用意をしますね……」

急いで螺旋階段を降りるとキッチンで昨日仕込んでおいた出汁を取り出す


ご飯もタイマー通りに炊けて
あとは切り身の鮭と卵を焼いて、味噌汁に豆腐と青葱を細かく刻んだもの入れる

ネギは苦手だと言っていたけれど……辛味がダメならこれは平気なはず

昨夜塩麹に浸けておいた人参と胡瓜を出せば…完成

準備が整う頃に彰貴さんが席についた

「どうぞ、召し上がれ」

「有り難ういただきます」

彰貴さんは今日も綺麗な指で流れるような所作で箸を動かし食べ始めた

みとれながらも時間があまりないので急いで目の前で食べていく

その味は1人で食べるより美味しい気がした







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