囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活

「可愛らしいお嬢さんね？彰貴くん」

叔母のフキエさんが私にニコっと笑いかけてくれた

「そうでしょう？フキエさん、彼女は仕事熱心でとても温かい人でね…料理も上手いんですよ」

「そう…それは良かったわね、先日小野田さんが月島さんは仕事が出来る女の子だぞって褒めてらしたから」

「小野田さまとお知り合いなんですね」

「ええ、昔からの友人なの奥様が」

「そうなんですね！小野田様はいつも声を掛けて名前まで覚えてくださる優しいお客様なんです」

そう答えるとフキエさんがフフフと笑った

「こういう場だけ取り繕うのは簡単だけれど、貴女は違うのね？評判が全く縁故の無いところから聞こえるって言うのは、本当に貴女が仕事熱心だと言う事よね」

そう言って貰えると素直に嬉しかった

「有難うございます」

「彰貴くん、幸せになるのよ？」

少し瞳を潤ませたフキエさん

ユキトさんとフキエさんには子どもが居ないからか、甥の彰貴さんを本当の子どものようにかなり可愛がっているらしい

「はい…」

彰貴さん…演技が完璧すぎです…

まるで私に恋をしているかのような甘い瞳でこちらを見る
そんな目で見られたら…

(勘違いしてしまいそうになる)

「那寿奈さん…」

呼ばれて振り返ると先日レストランでお会いしたばかりの社長だった
社長はダークグレーのダブルのスーツに濃紺地に金の刺繍がされたネクタイ、上半身は筋肉質なのかがっしりしていて身長も高い

彰貴さんが繊細な美麗なイケメンだとしたら社長は体格の良い渋めのイケメンだ…

その横には今にも消えてしまいそうに細くて美しい顔の女性…

(彰貴さんそっくり…)

「社長こんばんは…先日はありがとうございました」

「やぁ、こちらこそ先日はどうも…今日は妻も来ていまして…ほらナナミ、彰貴の…」

社長が優しく奥様の肩を抱いて私の前に連れてくる

大きな目がこちらを見た…探るような目ではなく、澄んだ湖のような透き通った眼が私をただ「みて」いた

そして何やら一人で頷きながら彰貴さんの手を握ってこう言った

「綺麗な方ね？彰貴…大事になさい」

「ありがとう母さん」

彰貴さんのお母様は今度は私の手を握る

「彰貴を選んでくださってありがとう…少し感情表現が苦手な子だけど…悪い子じゃないのよ
手前味噌ですけれど、本当は優しい子ですからどうぞ支えてやってね」

綺麗なガラスから響くような綺麗な声
抜けるように白い肌に大きくて美しい黒い瞳

見ているだけでため息が出そうな美女で私は緊張してしまう

「は、は、はい！精一杯お仕えします」

「あら、使用人じゃないのだから…恋人なのでしょう？」

（あ、しまったつい…）

「そうでした…ははは…よろしくお願いします。」

私は慌てて取り繕ったが…なんだかお母様には見透かされているような気がしないでもない…