囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「那寿奈…傍にいて…」

掠れた彰貴さんの声、けれどこれは…演技?

「でも好きになれないって…」

先ほどそう聞いたばかりだ

「…だけど…那寿奈…君を離したくない」

そのまま唇が降りてきて私の唇を塞いだ

「…っん…」

優しく上唇を食まれ、そのまま何度も角度を変えて口づけが降りてくる

「那寿奈…」

長い指が首筋を這い…後頭部をしっかりと抑えられて動けないけれどそれはちっとも不快じゃなくて…

むしろ

(もっと傍に来てほしい…)

そんな浅ましい思いも抱いてしまう

「彰貴…さん…」

私は彰貴さんの腕を軽く握った

…降りてくるキスが深まっていく

歯列を辿る舌が

甘く、私を狂わす

(好き…)

もっと欲しいと身体を近づければ…
彰貴さんが私をもう一度抱き締めた

(好き…)

甘いキスに酔いしれながらどこか冷静な気持ちもあって
泣きたい気持ちにもなっていた

(好きなわけじゃないんだ…きっと彰貴さんは寂しいから、優しいから…私の思いに応えようとしてくれているだけだ)

その事実に胸が痛い

何度も角度を変えたキスを重ねたあと

…彰貴さんがゆっくりと身体を離して私を抱き上げた


運ばれた先は2階の水色の扉の中

(もしかしてこのまま?…)

なんて思ったけれど時間は朝だし
私は休みだけれど彰貴さんは仕事だ

何より

(彰貴さんは私を好きなわけじゃない…)

そのままベッドに身体を降ろされ身を固くしていると
優しく額を撫でられた

「大丈夫…襲うなんてしないから…ただ、頼むから…もう暫く抱き締めて眠らせてくれないか?癒やされたい今すぐに……」

そんな風に言われた

「いいですよもちろん…その…好きなだけ抱きしめてください私で良かったら…それに私は休みですから…」

「ありがとう…」

彰貴さんが私を抱き締めながらベッドに横たわる

ぎゅっと背中に手を巻き付け
顔は私の肩口に埋める様にして眠る彰貴さん

アラームは一時間後に掛かっているから安心だし…このまま寝かせてあげよう

「すーすー」

すぐに安らかな寝息が聞こえて来た

私は彰貴さんの髪の毛をそっと撫でながらゆっくりと新呼吸をした

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