囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「今さら何しに来たんですか…」

私はなるべく冷静に声を発した

…本当なら、大声で罵りたい相手なのだから…

「相変わらず愛想無いな那寿奈は…何?こんなオジサンが今度の相手なのか?」

その男は下卑た笑いと共に行く手を阻んでくれた左東さんを見下ろした

「馬鹿言わないで…その方は私を助けてくださる方です…あなたと一緒にしないで」

長身ですっきりとした面差し、切れ長の目をしたこの男は坂下と言う

パッと見はイケメンだ
けれど…

(中身は最悪…)

手を出すでもなく、左東さんの手からするりと坂下が抜け出した

「冷たいなぁ…やりなおさねぇ?オレたち…冗談はさておき…辻堂の御曹司とデキてんだろ?でもそんなおぼっちゃまじゃ一緒にはいられないだろう?雑草は…」

「寝言は寝て言ってください…」

坂下はニヤリと厭らしい位に唇を両側に引き上げ笑う

「また雑草同士…仲良くしよーぜ那寿奈…な?」

「や、やめて…」

後ずさるとジリジリと坂下が近づいてくる

「知ってるぜ?契約なんだろ?お坊ちゃまの婚約者のフリ…なぁたんまりと金額釣り上げてさ…オレと暮らそうぜ?」

あの日々が思い出される…イヤ…怖い…
嫌な想い出に身がすくんだその時

「那寿奈さん!この者、排除してよろしいですか?」

左東さんの声が響く
私は声が出ないほど必死で頷いた

「畏まりました」

ひょこひょことからかうように動く坂下を
左東さんが一瞬にらみ…

軽やかに身を翻して軽く坂下の腕や身体を突いた

「は?何言ってんの……ぐはっ…ぁ…あぁぁ…いてぇ!!」

激しい動きには見えないのに…坂下が悶絶する

「…次は急所打つぞ…失せろ」

左東さんが唸るように言った

いつもの温厚な声ではない…地を這うような低い声

「わ、わかった……いや、もうやめる…」

そのまま坂下は墓地を逃げ出して行った

土の付いてしまった左東さんの膝を払うと

「ああ私は、だ、大丈夫ですから…ほら、手が汚れますよ那寿奈さん…それより…大丈夫ですか?…」

今さら…身体が震えているのに気がついた

「は、はい…大丈夫です…有り難うございました左東さん…」

「あまり触れますと彰貴様に叱られますからね」

などと冗談を言いながらも左東さんが優しく背中を擦って私を車に戻してくれた

「あの者は…あ、いえ…差し出がましい真似を致しました…」

「気になりますよ…ね…恥ずかしながら…元、お付き合いしていた人です…私が馬鹿で…騙されたと言いますか…」

本当に消したい過去だ

「誰にでも過ちなどはありますでしょう…では戻りますね」

左東さんはそれ以上は聞かず静かに車を出した





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