囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「…ぺんぺん草……」

あわあわしていると辻堂さんはぽそりと呟いた

「へ?」

「あ、いや……家がないなら調度良い…来い」

細いけれど力強い指が私の手を引いた



訳のわからないまま手を引かれ
ホテルの地下の駐車場まで連れてこられて
何だか高級そうな大きな車の後部座席の奥に乗せられた

「出してくれ」

「畏まりました」

中に待機していたらしい寡黙そうな運転手がゆっくりと車を発進させた

「…」

無言の御曹司の隣で、私は何も聞けず
全身に冷や汗をかきながら座り心地のよいシートの筈なのに……もぞもぞしながら窓の外を横目で見る

暫く街の風景だったのに
気づけば森の中を車が進んでいた

(ま、まさか…)

あんな所で勝手に寝泊まりしていたのがバレたから
罰としてこのまま森に捨てられるのかも…

何せ相手は「美麗冷酷男子」として名高い
辻堂グループの専務!!


何ですぐに気付かなかったんだろう…

そんな風に考えていると車が門をくぐり抜け
森の奥の建物に横付けされた

「降りるぞ」

またまた手を引かれ降りたところは

(お、お屋敷?)

森の奥にある大きな洋風の屋敷だった

「あ、あ、あの、ここは……」

「家…だけど?」

あっさりと答え、それ以上何も言わない辻堂さんの後ろをついていく

扉を開くと広い白い玄関ホール
何人分?と言う壁一面のシューズボックスがある
そこに靴を置くように促されたので置き、ふかふかのルームシューズに履き替える(そこは和風なんだ……)


もう一枚扉を開くと中は広いホールになっていて螺旋階段が真ん中から2階に続いていた

(お、お城?)

「上だ…」

思わずみとれていると
辻堂さんが長い脚で螺旋階段を上り始めたので慌てて追いかけるとそこは……

広い部屋で一面が大きなガラス窓で、高そうなインテリアでテレビなどが置かれている…どうやらリビングだった


…そしてよく見ると部屋の奥には2つ淡い黄色と水色の扉がある

部屋を抜けてそこまで進むと辻堂さんが右側の扉を開く

「この右側の黄色の扉はトイレ付きのゲストルームだから好きに使ってくれ……バスルームは一階になるが…シャワーだけなら奥にゲスト用のシャワールームもあるからな…食事は一階の奥にダイニングキッチンがある」

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