囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
偽婚約者の心得
こうして私は囚われの身になったわけだけれど

「仕事は行っていいよ、別にずっと部屋に閉じ込めようと言う訳じゃない…ただし、運転手は付けさせて貰う…その運転手に従って行動して欲しい」

「に、逃げませんよ?」

(そんな運転手なんて付けられても恐縮してしまう!)

私がワタワタと慌てて手を顔の前で振ると
呆れたように辻堂さんは話し出した

「違うよ、君の身の安全を守る…と言うかまぁこういう家だからね…色々あるんだ、そこは聞き分けてくれ」

「畏まりました」

しかし……傍で見ていると綺麗な人で無駄にドキドキしてしまうから深々と顔を隠しながらお辞儀する

すると、辻堂さんの冷たい表情が一瞬緩む

「不思議な人だね君は……」

「え?」

「いや……今日はもう休んでいいよ。
じゃあオレの部屋はここだから……あ、これ……何かあれば連絡してくれ」

隣の水色の部屋に入っていこうとした辻堂さんが私に手渡したのは金色のスマートフォン

「オレとこの家、そして運転手にしか電話は繋がらないけど通信は出来るから好きに使えばいいよ」

「はい…辻堂さん」

「ん?」

私はもう一度頭を下げて

「おやすみなさい」

と、告げると辻堂さんは冷たい表情を…少しだけ緩めた、ように見えた

「ああ、おやすみ」





パタンと閉まった扉の前で私は緊張がとけて一瞬よろめいたけれど慌てて黄色い扉を開ける

(早く寝ないと…)

時間は深夜1時を過ぎている

…明日の出勤時間は遅番なので10時出勤だが
さすがに寝ないとキツイだろう

ベッドは可愛らしい淡い黄色のカバーとふかふかのブランケット……眠い私には魅惑的ですぐに潜り込みたかったが…

シャワーを浴びたい…

急いで支度をしてもう一度扉を出てシャワールームで浴びて髪を乾かし終わった所でライトを消すと

ゆらりと鏡に影が動いた気がした

(ん?)

スッと身体が浮いて…

「は?」

気付いたら後ろから伸びた腕に抱き上げられ
あっという間に…横抱きにされた

人肌を腕に肩に感じる

「え?は?あの……」

「……」

パニックに陥ってる間にあれよあれよと言う間に

……水色の扉の中に引き入れられた







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