誓いのキスを何度でも
ビールをダイニングテーブルに並べ、
誠一が買ってきたとクラッカーと枝豆なんかを並べていると、
誠一が洗面所の電球を替えて、ダイニングに戻ってきた。

「果歩、少し話そうか…」とテーブルに向かい合って座った。

「俺は桜花グループを継ぐよう言われて育ってきた。
親父に認めてもらいたいって思ってきたけど、
親父は自分の思い通りになる息子が欲しかっただけだった。
果歩があの病院からいなくなって
留学先で苦しくて仕事にのめり込むように打ち込んだ。
寂しくなれば、その時寝てくれると言ったオンナノコと誰とでも寝た。
その時の寂しさを紛らわせれば、誰でも良かった。
果歩の代わりなんか欲しくなかった。
留学先から何度も帰るように言われても帰らなかった。
去年の年末に親父が倒れたって連絡が来て、
慌てて帰ったら、軽い心筋梗塞で、
ステント入れたらピンピンして、俺の帰りを待ってた。
しばらく親父が仕事に戻れるまで手伝うように言われて、手伝ってたら
もう、帰って桜花グループを継げって言われて、勝手に副院長にされてた。
まあ、毎晩のように喧嘩。
見合いもどんどん進めようとするし、
フザケンナっておもって
俺は一生結婚しない。
跡継ぎなんて、親父の操り人形になるだけだって、絶対に作らない。って喧嘩していたところに
果歩がまだ1人でいるって知って、
飛び出してきた。
やっとあの家から解放された。って事だ。
情けないけど、7年かかってやっと家を捨てる決心がついた」

誠一が苦しい顔で一気に話終わると、
ビールをゴクゴクと煽った。
私はビールには手を付けず、ただ見つめているだけだ。

何を言ったらいいのかわからない…






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