この手だけは、ぜったい離さない



あっ……あの明るい茶髪に、金髪がまざった派手な髪色は…。



「出た……仙崎と荒井だ」



私が洋くんだ!と言うよりも早く、ついさっきまで笑い声をあげていたみっちゃんが深いため息を吐いた。



荒井っていうのは、たしか同じクラスで昨日もずっと洋くんと一緒にいてノリって呼ばれていた…。

名前は荒井則和(あらいのりかず)くんだ。

白に近い金髪をつんつん立たせていて、眉毛も半分しかないし見るからに怖そうな人。



「今日も席取りありがとさーん」



なんて言いながら、洋くんは入り口付近の席に座っていた男子生徒の肩をぽん、と叩いている。



「え……ちょ、なにあれ?」

「座れる席がないから、ああやってムリヤリ誰かをどかして座るんだよ。普段は自転車で来てるくせに、たまにバスを使ってはあんなことすんのよ」

「えぇ?なにそれひどくない?」



洋くんに肩を叩かれたメガネの男の子とその隣に座っていた男の子は、すっかり怯えているみたいで揃って「はははははいっ!」だなんて声を震わせているし。

洋くんは、咄嗟に吊革を握ったメガネくんたちに「ありがとう」すらも言わないし。

荒井くんだって洋くんの隣に座った途端、スマホをいじって感謝のひとつも示さない。



っていうか、そんなことをしたらダメでしょ洋くん。



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