この手だけは、ぜったい離さない
「おーいっ、あかり!」
15時ぴったりに先生が「では、解散」と言ったすぐあとのこと。
ガラガラとキャリーバックを引きながら、ひとり校門に向かって歩きだしたところで。
洋くんに呼ばれた私は足を止め振り返った。
「なぁ、今から帰るとこだろ?それなら一緒に帰らねぇ?」
「へっ?一緒に?あっ……うんっ、もちろんいいよ!」
いきなり声をかけられたからびっくりしたぁ……。
迷うことなく頷いた私は、「じゃあ行くか」って笑顔で歩きだした洋くんの隣に並んだ。
「昨日の夜は遥と神田がいきなり来たせいで、あかりとゆっくり話せなかったからなー。今日はあかりと一緒に帰りてぇなって朝から思ってたんだよ」
「そうなんだ?実は私も昨日、洋くんとあんまり話せなくて残念だなって思ってたんだよね。だから誘ってくれて嬉しかったよ、ありがとう洋くん」
……こんなことを言ってしまったら、洋くんに好意がバレてしまうかな?
誘ってくれて嬉しかっただなんて……今思えば恥ずかしいセリフ。
「……ふーん。それならよかった」
と言って顔を逸らした洋くんの耳は、赤く染まっていた。