この手だけは、ぜったい離さない
洋くんも「朝から元気だな」ってにこにこしてるけど、タバコの臭いをプンプンさせているもんだからちょっと尻ごみしてしまう。
いやいや……私までみんなと同じようにビビッてたらダメだよね。
だって洋くんには昔のような優しい心を思いだしてほしいんだもん。
平気で人が嫌がるようなことをするような人にはなってほしくないんだもん。
私にとって洋くんはいちばんの友達。
その思いはこの6年間いちどだって変わったことはないの。
小刻みに震える拳をぎゅっと握りしめ、俯きがちの顔をぱっとあげた。
「ねぇっ、洋くん!今度からは私が洋くんと荒井くんの席取りをしてあげるよっ」
「……え?なんだよそれ?」
にこにこしながら私を見おろしていた洋くんの目が、一瞬にして点になった。
「はぁ?」と低い声を洩らす荒井くんの方からは、殺気だった視線を感じるから見ないようにしておこう……。
「私ね…バスの中で見てたんだけど。座っている人からムリヤリ席を取るのはよくないでしょ、洋くん?」