同僚は副社長様
『『『カンパーーイっ』』』
賑やかな居酒屋。
休日のせいか、日がまだ沈みきっていない時間から、飲み会という名のコンパは始まっていた。
うちの営業部から女子4人と私入れて、計5人。それに対して、藤川商事の営業部からは4人の男衆。
明らかに1人足りない。
『ごめんね!あと1人、急遽仕事が入ったみたいで、遅れるみたいなんだ!』
始まって早々、幹事役の男性が申し訳なさそうに言っていたのを思い出す。
最初は自己紹介をしたりして、営業部の中で1人秘書課の私がいることもあって、秘書課の話題で盛り上がったりしていたけれど、さすがは営業同士。
営業ならではの積もる話もあるらしく、私にはあまりよくわからない話で皆、思い思いに盛り上がっている。
そうして取り残されたのはやっぱり私だった。
半年前までは営業にいたといっても、現場を知らない事務だ。
現場を知っている彼らとは若干の差が出て来る。
……やっぱり、勢いに任せて出会いの場に繰り出したのがまずかったかな。なんて、後悔し始めた頃だった。
『…悪い、遅れた。』
背の向こうから、低い声が聞こえた。
皆それぞれ盛り上がっているせいか、彼の大きくない低い声は私にしか届かなかったようで、私だけが後ろを向く。