同僚は副社長様



『『『カンパーーイっ』』』


賑やかな居酒屋。

休日のせいか、日がまだ沈みきっていない時間から、飲み会という名のコンパは始まっていた。


うちの営業部から女子4人と私入れて、計5人。それに対して、藤川商事の営業部からは4人の男衆。

明らかに1人足りない。


『ごめんね!あと1人、急遽仕事が入ったみたいで、遅れるみたいなんだ!』


始まって早々、幹事役の男性が申し訳なさそうに言っていたのを思い出す。

最初は自己紹介をしたりして、営業部の中で1人秘書課の私がいることもあって、秘書課の話題で盛り上がったりしていたけれど、さすがは営業同士。

営業ならではの積もる話もあるらしく、私にはあまりよくわからない話で皆、思い思いに盛り上がっている。

そうして取り残されたのはやっぱり私だった。


半年前までは営業にいたといっても、現場を知らない事務だ。

現場を知っている彼らとは若干の差が出て来る。

……やっぱり、勢いに任せて出会いの場に繰り出したのがまずかったかな。なんて、後悔し始めた頃だった。


『…悪い、遅れた。』


背の向こうから、低い声が聞こえた。

皆それぞれ盛り上がっているせいか、彼の大きくない低い声は私にしか届かなかったようで、私だけが後ろを向く。


< 13 / 80 >

この作品をシェア

pagetop