同僚は副社長様
「この前、芽衣から結婚式の招待状が来たの。おめでとう。」
コンパから抜け出した私たちは、久々に再会したということもあって、2軒目の居酒屋で乾杯した。
『ああ、…そういう言葉は本人に直接言ってやってよ。』
「言ったよ、結婚するって報告された時に。」
別に自分が結婚するわけではないからと冷めた言葉を返してくるけど、ビールを片手にしている響くんはなんだか嬉しそうだ。
大切な妹の結婚だもんね。照れてるのかな。
人の気持ちには敏感なのに、自分の心には疎い響くんらしいなと、心の中で温かな気持ちがじんわりと広がって行くのを感じる。
『そういう、美都は?』
「ん?」
『結婚、…予定は?』
やっぱり響くんも気になるのはそこか。
古川くんといい響くんといい、独身男は意外と結婚という話題が好きなのだろうか。
それとも、結婚する予定のなさそうな女を捕まえて、わざと話しづらい話題を振るのが楽しいのか?
2人ともそこまで性格の悪い人じゃないと思うから、前者の方だとは思うけど。
「…ない、かな。」
『え、そうなの?』
正直に結婚の予定がないことを伝えると、響くんから気の抜けた声が返って来た。
まるで、私に結婚の予定がないことが信じられないとでもいうような。