同僚は副社長様


「いただきます」

「どうぞ」


お弁当のフタを取るのは自分でやりたいと、パカッとお弁当を開けた古川くんの表情は、まるで少年のようにキラキラと瞳を輝かせている。

その期待値を、下げてないといいけど。

そんな不安は、卵焼きを一口食べた古川くんの美味しいの一言で、あっさりと払拭された。


「やっぱり美都の卵焼きは美味しい」

「それは良かった」


昨日も思ったけど、古川くんって本当に美味しそうに人が作ったものを食べてくれるよね。

いつも二人で外食する時は、こんなに表情豊かにご飯を食べないから、昨日はちょっとギャップを感じた。

家庭的な味が好きなのかな?なんて、勝手に古川くんの好みを探ってしまうのは私の悪い癖だと思う。

古川くんがパクパク食べてくれるのを見て、ようやく私もお弁当に手を付ける。


「…あれ、美都のお弁当と俺の、なんかちょっと入ってるおかず違くない?」


私も卵焼きから食べていると、古川くんからそんな指摘を受けた。

う…バレるの早くない?

確かに、私用と古川くん用ではおかずの中身がちょっと異なっていて、古川くんの方が一手間加えたものが多いし、栄養バランスも考えてフルーツなんてものも入っている。

お弁当のサイズも、古川くんの方が大きいから、どうしても品数増やさなきゃいけなかったんだよね。

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