同僚は副社長様
「古川くんは男性だから、私よりいっぱい食べるでしょ。だから私より入ってるものが多いだけだよ」
「そんなこと言って、美都のお弁当はきんぴらごぼうとか、野菜炒めとかばっかで、肉らしいものはベーコン巻きしかないのはどうして?俺にはミニハンバーグまで入って、卵焼きだって出汁巻とチーズ入りのものと2種類も入ってるのに」
う。そこを突かれると痛い。
気合が入りすぎて色々作ったのは良かったものの、私用のお弁当には入りきらず、出来のいいものはほとんど古川くん用に回したんだ。
フルーツも値段が高いから、節約のため古川くんにしか入れていないのも、きっと彼にはお見通しな気がする。
「美都の分まで食費は全部俺が出すって言ったの、忘れた?」
昨日、彼に食事面サポーターを頼まれたとき、私が彼に提供する食費とともに私の分まで賄ってくれることも伝えられたことを、彼は言っているのだろう。
俯き加減になる私を覗き込み、視線を合わせようとしてくる。
その距離があまりに近すぎて、鼓動の高まりとともに顔に血が昇っていく感覚がした。
やばい、今絶対、私ってば顔赤い。
ちょっとしたことで、彼のことになると顔が赤くなるのは、この半年間でも中々治らない。
「お、覚えてるけど、そんなの甘えられないよ」
「素直に甘えていいって言ったよね、俺。美都も納得してたでしょ」
そう。
食費の件を言われたときも、私は素直に従おうとはしなかった。
私だって働いてるし、生活に困っているわけじゃないのだから、自分の食費くらい自分で払う、と。
だけど、彼は引き下がらなかった。
私の分まで払うと言って引かず、挙げ句の果てには食事面サポーターの給与だと言い出したのだ。
私が受け取らなくても、会社からの給与とともに私の銀行口座に振り込むから、と言われて、私が降参したのだ。