婚約恋愛〜次期社長の独占ジェラシー〜
「相手の方が着物好きなの?」

 わたしの髪は葉月がやってくれて、ふんわりとアップにされている。彼女はそれから仕事だと、ニヤニヤしながら出かけていった。なにか企(たくら)んでいるような、いたずらっ子の笑みだった。

「お見合いといったら、お着物じゃない? 記念の日なんだから、もうあーだこーだ言うのはやめなさい」
 

 一週間前のプールパーティーから帰った土曜日、リビングにいたお母さんに『お見合いを設定して!』と言ったのはわたし。お母さんは鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔になっていたけれど、落ち着いたあとは『ようやく結婚する気になったのね』と目じりを下げた。
 
 それから街の不動産屋として人脈の広い両親は、先週の土曜日から三日後、お見合いの相手が決まった、と会社から帰宅したわたしに告げた。お見合いは今週の土曜日。めちゃくちゃハイスピードなお見合いだ。

『写真見る?』

 お母さんはなんだか嬉(うれ)しそうにニヤニヤしている。隣にいるお父さんもそう。

『ううん……』

 わたしは肉じゃがを口に運びながら、首を横に振った。写真を見てがっかりしたり、お見合いする気持ちがそがれたりしたら……と思い、拒否していた。

 だからわたしは相手のプロフィールも顔も知らない。無謀だと思ったけれど、そんな出会いも運命かも、って。


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