Dear Hero
二人だけの帰り道。
何を話していいのか、わからなかった。
右手と左足を一緒に出す、なんて簡単な事さえもちゃんとできているかわからなくなるくらいだった。


「……こうやって、テツくんと二人でお話しするのって初めてだね」
「う、うん…。確かに…」
「ダイくんと仲いい人ってなかなかいないから、テツくんと出会えてよかった」
「あいつ……ほんと友だち作らねぇよな」
「ねー!別に変な人でもないのにね」
「そうそう。ちゃんと話せばいいヤツなのにな。もったいねぇの」
「ほんとに!絶対人生の9割損してるよね!」
「大護の場合、それ以外にも問題はありそうだけどな」
「ほんとそれ」

楽しそうに笑う紺野。
よかった。俺、ちゃんと話せてる。
話題が大護ってのが、ちょっと癪だけど。


「……ダイくんの良さ、知っててくれる人が増えて嬉しいな」


笑顔の花が咲く。
冬なのに、紺野の周りだけ夏になったようにぱっと明るくなる。



紺野の笑顔は誰もが認めるチャームポイントだ。
だけどその笑顔は、俺以外にも向けられる。
空手部のヤツら、クラスのヤツら、コンビニの店員にも。


ただ一人だけ。
特別な笑顔を向けられているヤツがいるのも知ってる。


大護だ。


俺が知ってる中では、大護といる時の紺野が一番かわいい。
悔しいけれど大護に向けられている笑顔が、一番好きだった。

こちらに向く事はないと知っているのに、好きな気持ちはどんどん大きくなって止まらない。
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