Dear Hero
帰りの電車も紺野を護りながら地元の駅に着く。

駅からの道。
いつも行ってる本屋で好きな漫画を薦め合ったりした。
ファッション誌を立ち読みする紺野の後ろから、「これ、紺野に似合いそう」と指差した服のメーカー名を、呪文みたいにブツブツと覚えているのがかわいかった。

CDショップで紺野に薦められたアーティストのCDを試聴した。
俺の好みの感じで、音楽の趣味が合うのっていいなと思った。

メガネ屋で試着してみた。
孝介みたいな黒縁メガネをかけてみたら、「なんか違う」と残念な顔をする。
「黒だからかなぁ?」なんて言いながら、茶色いフレームのメガネをかけさせた後、じっと見つめて「なんか……イイ」という反応に困るコメントをいただいた。
紺野は細いフレームのが似合ってた。
「女教師みたいでエロイ」って言ったら、スパンと頭をはたかれた。



特別な事なんかしなくても、ただ紺野と一緒にいるだけで何でも楽しかった。
“友だち”の枠を一歩出ただけで、こんなにも世界は色づくんだって思った。



メガネ屋を充分楽しんで外に出た途端、紺野のお腹がきゅるるっとかわいく鳴る。
青ざめながら、紺野はすごい勢いでお腹を押さえつけた。

「………っ」
「……あー、俺なんか腹減ったなぁ」
「………」
「なんか食べに行きたいんだけど、紺野はもう帰りますか?」
「……気を遣った言い方しなくていいから……」
「ひひっバレた?食いたいものある?」
「……ノーコメント」
「ないならさ、もんじゃはどうですか?」
「…!もんじゃ、好き」
「あ、でもさっきタコ焼き食ってたよな。粉もん続くけど…」
「気にしない」
「……ちょっとは 気にした方がいいぞ。まぁいっか。俺の行きつけのお店あんの。そこでもいい?」

お腹を両手で押さえたまま、高速で首を縦に振る紺野。
エサを前にした時のもちとそっくりだった。


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