Dear Hero
「テツくん」

駐輪場でこうやって俺に声をかけるのは、誰だか決まってる。

「お誕生日、おめでとう!」

グレーのカーディガンを着こんだ紺野が、俺の大好きな笑顔と共に待っていた。

「おお、あんがと」
「誕生日なのに……ぼっちなの?」
「ぼっちって言うな!」
「ていうか、いつもここで会う時ぼっちだよね」
「チャリ通のヤツが少ねぇんだよ。つーか、お前と大護を会わせないようにこそこそしてたんだろうが」
「そうでした。ごめんね」

てへぺろとばかりに笑う。
冗談を言う紺野は久しぶりだった。



「今日は、どうした?」

言ったはずだ。
次に会うのは“紺野の気持ちが固まった時”だ、と。

「どうしてもね。テツくんに直接“おめでとう”って言いたくて」
「そう」
「あと、テツくんが一人で淋しそうだから一緒に帰ってあげようかなって」
「紺野」
「……」
「素直になってって言ったよな」
「……一緒に帰りたい」
「………ん」

差し出された手に、疑問を浮かべる紺野。

「帰るんだろ?カバン、載せるから」
「わ、うん、ありがとう」


カゴに乗せていた袋をどけて紺野のカバンを置く。

「それは?」
「あ、これは…自分で持つ」

持っていた小さな紙袋は、身体の後ろに隠されてしまった。


「それ、何?いっぱい入ってる」

カゴから退かした袋を、紺野は興味津々に見つめる。

「クラスのヤツとか、なんか色んなヤツに誕生日プレゼントとかいってもらった」
「え、すごい。人気者だね」
「食いもんばっかだよ。しかもどっちかっつーとネタ系の」
「例えば?」
「梅干し味のチョコとか」
「つらい」
「チョコは好きだけど、それじゃない感」
「チョコ好きなんだ」
「好き。甘いの好き。ケーキはショートケーキよりチョコケーキがいい」
「……それ、リクエスト?」
「え、紺野作ってくれんの?」
「……っ」

しまったって顔をする。
どういう意味の“しまった”なのかは読み取れないけど、この話題はもう触れない方がいい気がした。
自分のためにも。


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