Dear Hero
大した会話もなく、通い慣れた道をのんびりと歩く。
デートの日は、手を繋いでいれば会話なんかなくても心が穏やかだった。
手を触れてすらいない今日は、沈黙が重い。
紺野はこのまま、何も話さずに帰っていくのだろうか。
俺に、期待だけ抱かせておいて。
あの十字路を曲がると、紺野の家の方面だ。
紺野は、何も言わない。
十字路に差し掛かる。
角を曲がろうと自転車のハンドルを切る俺のカーディガンを、きゅっと引っ張った。
「………」
「あ、あの……」
「……なに?」
「もう少し……一緒にいられないかな」
伏し目がちの願いは、かろうじて耳に届くほどに小さな声だった。
「ちゃんと、話がしたくて……」
真っ赤に染まった頬にそっと手を当てると、びくっと震える。
中はじんわりと熱を持っているのに、触れた表面はひんやりとしていた。
指先までめいっぱい伸ばした、カーディガンの袖。
「……うち、来る?」
「……っ」
「今日も、誰もいないけど」
「………」
「もしかして、外でおしゃべりでもするつもりだった?」
「………」
「こんなに寒そうにしてるのに?」
「……!」
触れていた手を、頬から右手に移す。
ぎゅっと握ると、指先まで冷たかった。
「イヤなら、振りほどいて逃げて。逃げないなら、連れて行く」
そのまま動かない紺野を逃げないと判断した俺は、手を握ったまま切りかけた自転車のハンドルを戻して自分の家へと向かった。
デートの日は、手を繋いでいれば会話なんかなくても心が穏やかだった。
手を触れてすらいない今日は、沈黙が重い。
紺野はこのまま、何も話さずに帰っていくのだろうか。
俺に、期待だけ抱かせておいて。
あの十字路を曲がると、紺野の家の方面だ。
紺野は、何も言わない。
十字路に差し掛かる。
角を曲がろうと自転車のハンドルを切る俺のカーディガンを、きゅっと引っ張った。
「………」
「あ、あの……」
「……なに?」
「もう少し……一緒にいられないかな」
伏し目がちの願いは、かろうじて耳に届くほどに小さな声だった。
「ちゃんと、話がしたくて……」
真っ赤に染まった頬にそっと手を当てると、びくっと震える。
中はじんわりと熱を持っているのに、触れた表面はひんやりとしていた。
指先までめいっぱい伸ばした、カーディガンの袖。
「……うち、来る?」
「……っ」
「今日も、誰もいないけど」
「………」
「もしかして、外でおしゃべりでもするつもりだった?」
「………」
「こんなに寒そうにしてるのに?」
「……!」
触れていた手を、頬から右手に移す。
ぎゅっと握ると、指先まで冷たかった。
「イヤなら、振りほどいて逃げて。逃げないなら、連れて行く」
そのまま動かない紺野を逃げないと判断した俺は、手を握ったまま切りかけた自転車のハンドルを戻して自分の家へと向かった。