Dear Hero
紺野は、俺の方を向き直すと髪を整えて制服を正す。
髪が変な輪っかを作っていたから、直そうと手を延ばしたら「まだ触らない!」と怒られてしまった。

大きく、息を吐く。


「私にとってのテツくんは、“特別な友だち”だったの」
「……うん」
「誰にも言えない気持ちを打ち明けられる。二人だけの秘密を共有しているような、“特別な友だち”」
「………」
「きっかけは、ダイくんの事を分かってくれる人がいるっていう嬉しさからだったけど、テツくんはいつも真剣に私の事を応援してくれてた。それが、ダイくんの事でも、そうでなくても」
「………」
「恋の相談相手だけじゃなくて“友だち”として、テツくんの事、大好きだった」
「………うん」


想い出のページを一枚一枚めくるように、目を伏せながら紺野は静かに言葉を紡ぐ。


「初めてテツくんに好きな子がいるって聞いた時、嬉しかったんだよ」
「………」
「ずっと私の事を助けてくれたテツくんが、幸せになるチャンスがあるんだって」
「………」
「嬉しかった……のに。こんなにも気持ちを真っすぐぶつけてもらえるなんて、テツくんに好かれる子はちょっと羨ましいな、なんて……思ったりもした」
「………」
「ダイくんの事、何度も心が折れそうになったけど、いつもテツくんが奮い立たせてくれた。何度も背中を押してくれたから、気持ちを伝える事ができた。……ありがとうね」
「……紺野ががんばったからだよ」
「振られるのはわかっていたんだけど、実際に振られてみたらやっぱりつらくって。苦しくて、消えたくなって」
「………」
「そんな時、近くにいて欲しかったのはテツくんだった」
「……だから、俺の名前を呼んだの?」
「やっぱ聞こえてたんだ。あれは……本当、自分でも気づかないくらい無意識に呼んでたみたい」

恥ずかしそうに笑うと、誤魔化すように頭を掻いた。

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