Dear Hero
紺野たちからの誕生日プレゼントも渡されて、宴は盛り上がっていく。
狭い部屋に高い人口密度、おまけに鍋だ。
暑くなってきてシャツの袖をまくると、「そういえば」と紺野が気づく。


「ダイくん、その怪我どうしたの?」
「ええと、これは……」

ついに来た、と思った。
怪我というのは、顎を派手に擦った擦り傷の事だ。
もうかさぶたになっていて絆創膏も貼ってなかったから、傷跡は目立ってしまう。
怪我の原因が原因だけに口籠っていると、不思議そうな顔した依が、口をはさむ。


「この前の雨の日に、原付に乗っていたら白線で滑ったって言ってましたよね?」
「ええと……ハイ、そうです…」
「あれ?考え事しながら原付走ってたら縁石に乗り上げて転んだってこの前言ってなかったっけ」
「ば…っ!孝介、言うなって言ったじゃん!」
「……大護くん、どういう事ですか?」


隣にいる依が、樹さんみたいな黒いオーラを出している。


「ええとですね、ちょっと運転を誤りましてですね…」
「そこじゃありません。考え事しながらって…危ないじゃないですか」
「えーと、ハイ、そうですね…」
「どうして私に嘘ついたんですか」
「ええと、それはですね、余計な心配をかけたくなくてですね…」
「そんな優しさ、いらないです」
「すいませんでした……」


怒ったように皿にとった白菜をもぐもぐと口に詰め込む依。
頬を膨らましてんのをごまかしてるんだろうなぁなんて思ったけど、ここは素直に謝るしかない。
依は、強くなった。色んな意味で。

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