Dear Hero
「ウケる。大護めっちゃ水嶋に怒られてんじゃん」
「いや、怒られてるっつーか叱られてるっつーか…」
「どうみても今のはダイくんが悪いでしょ。私だってテツくんが同じ事してたら怒るよ」
「おお…飛鳥にならちょっと怒られてみたいかも……」
「ちょっと!私はそんな趣味ないよ!」
「大護、こうやって水嶋さんに怒られるの初めてじゃないでしょ」
「………」

ニンマリと笑う孝介に、依はばつが悪そうに目を泳がしながらグラスの酒をごくっと飲む。
昔の依なら、控えめに注意する事はあってもこんなに強く言う事はなかった。
どちらかというと、俺は気を遣わなくなってきたんだなという喜びの方が大きかったりもする。

「まぁ、いつも依が正しいからなんも言えないよ。俺の事心配して言ってくれてるんだし。それに…」
「……」
「依が言いたい事遠慮なく言えるなら、俺は何でも聞くよ」


グラスに口をつけたままこっそりと微笑む依を見て、ちょっと恥ずかしくなってグラスに残っていたビールを一気に飲み干した。
嬉しさを誤魔化すように、鍋の中に追加の野菜や肉をいそいそと投入していく依。


「大護って…ドM?」
「ちげぇよ!ばか!Mはどっちかっつーと哲ちゃんだろ!」
「やめてよ!私そんな趣味はないから!」
「大護も哲平も尻に敷かれるタイプだな」
「おお…飛鳥の尻になら敷かれてみたい…」
「だからやめてってば!」
「大護の口からこんな惚気話聞くとは思わなかったよ」


嬉しそうに笑うと、孝介は新しいビールの缶を開け注いでくれる。
缶を受け取って注ぎ返そうとしたら、「今日はもうやめとく」と断られた。
孝介はそんなに酒に強くない方。
同じ法学部の飲み会で、「イケメンが酔い潰れる姿を見てみたい」と女性陣に酒を盛られて四苦八苦している姿をよく見ては助けてる。
高校時代は孝介に助けてもらってばかりだったから、小さな恩返しだ。

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