Dear Hero
思い出したのは今朝の出来事。
昨日の今日だ。とてもじゃないけど朝から水嶋と肩を並べて歩けるほどの度胸は俺にはなくて、寝坊を理由に登校時間をずらしたんだ。
ベッドでぼーっとしながら、今日1日どういう風に立ち回ればいいのかと考えを巡らせる中で、大事な事を思い出した。
急いでベッドから起き上がると、机の引き出しからそれを掴んで階段を駆け下りる。
母さんに、俺から渡してくれと頼まれていた物だった。
廊下に出ると、ちょうど玄関を出る後ろ姿が目に入り、慌てて続く。
「水嶋!」
「澤北くん。おはようございます。お時間、大丈夫ですか?」
「あー…俺はチャリ飛ばすからいいよ。それよりこれ、渡しとく」
右手を差し出すと、その下にそっと両手を添える。
カチャと音を立てて小さな掌に落とされたのは、我が家の合鍵だ。
「これから、帰る時間とかずれるかもしれないから渡しておく」
「………ありがとうございます」
思ったよりリアクションがなくて、ちょっと拍子抜けした。
いつもと違う水嶋の素っ気なさが少し不安になる。
原因は…間違いなく昨日のアレだとは思うのだけど。
「…気をつけて行けよ」
「はい…澤北くんも急いで怪我しないでくださいね」
「大丈夫だよ」
目を合わさないまま背を向けると、結局、姿が見えなくなるまで水嶋がこちらを振り向く事はなかった。
「もう、それが答えだと思うんだけどね」
「意味が分からん」
哲ちゃんも同じく、孝介の言葉の真意が理解できていない。
「今日は…休み時間の度に大護が泣き言漏らすのと同じように、水嶋さんは掌をずっと眺めてニコニコしてたけど。たぶん、それだよね。普通、嫌いな人からもらった物をそんなに何度も嬉しそうに眺めるかな」
「“俺が”あげた物だからじゃなくって“俺の家の”物だからだろ」
「話を聞く限り、その水嶋さんの言動は俺は別の意味に取れるけどな」
「ますます意味が分からん…」
「だったら、自分で本人に聞きな」
チャイムが鳴り、先生が入ってきて話はおしまいになってしまった。
昨日の今日だ。とてもじゃないけど朝から水嶋と肩を並べて歩けるほどの度胸は俺にはなくて、寝坊を理由に登校時間をずらしたんだ。
ベッドでぼーっとしながら、今日1日どういう風に立ち回ればいいのかと考えを巡らせる中で、大事な事を思い出した。
急いでベッドから起き上がると、机の引き出しからそれを掴んで階段を駆け下りる。
母さんに、俺から渡してくれと頼まれていた物だった。
廊下に出ると、ちょうど玄関を出る後ろ姿が目に入り、慌てて続く。
「水嶋!」
「澤北くん。おはようございます。お時間、大丈夫ですか?」
「あー…俺はチャリ飛ばすからいいよ。それよりこれ、渡しとく」
右手を差し出すと、その下にそっと両手を添える。
カチャと音を立てて小さな掌に落とされたのは、我が家の合鍵だ。
「これから、帰る時間とかずれるかもしれないから渡しておく」
「………ありがとうございます」
思ったよりリアクションがなくて、ちょっと拍子抜けした。
いつもと違う水嶋の素っ気なさが少し不安になる。
原因は…間違いなく昨日のアレだとは思うのだけど。
「…気をつけて行けよ」
「はい…澤北くんも急いで怪我しないでくださいね」
「大丈夫だよ」
目を合わさないまま背を向けると、結局、姿が見えなくなるまで水嶋がこちらを振り向く事はなかった。
「もう、それが答えだと思うんだけどね」
「意味が分からん」
哲ちゃんも同じく、孝介の言葉の真意が理解できていない。
「今日は…休み時間の度に大護が泣き言漏らすのと同じように、水嶋さんは掌をずっと眺めてニコニコしてたけど。たぶん、それだよね。普通、嫌いな人からもらった物をそんなに何度も嬉しそうに眺めるかな」
「“俺が”あげた物だからじゃなくって“俺の家の”物だからだろ」
「話を聞く限り、その水嶋さんの言動は俺は別の意味に取れるけどな」
「ますます意味が分からん…」
「だったら、自分で本人に聞きな」
チャイムが鳴り、先生が入ってきて話はおしまいになってしまった。