Dear Hero
俺の腕にぴったりと紺野がしがみついたまま、出口を出る。
久しぶりの明るさに目が眩みながらも、気になる箇所に目をやると、やっぱりそうだ。
絡む紺野の腕と、俺の腕を包み込むように当たる胸。
目の当たりにした事で実感が涌いて反応してしまう、正直な俺。

「紺野。その…なんと言うか…腕、ごちそうさま」
「ごち……?ってきゃああ!!ごめん!!」

自身も状況を把握し、急いで俺から距離をとった。

そういや、こんな状況前にもあったなぁなんて思いながら、とある変化を隠すようにしゃがみ込む。
紺野が離れた後も残る感触を拭き取るように、右手で口元を拭った。


「ごめんダイくん、大丈夫…?気分悪い?」

心配そうに覗き込む紺野。
いや、むしろ元気なんです。

「どこか座る?」
「……そうしてもらえるとありがたい」


少し歩いたところにベンチを見つけて、体を曲げたまま移動する。
腰を下ろすと、膝に肘を置いて前屈みの姿勢をとった。
よし、これで隠せたはず。


「はああぁぁぁ…お化け屋敷、怖かったねぇ」
「そんな涙目になるくらいなら無理だって言えば良かったのに」
「だってせっかくダイくんと回るんだもん。ダイくんが好きなもの一緒に見たいよ」


照れくさそうに笑う紺野。

“女の子の顔だ”
何となく、直感的にそう思った。



照れ隠しなのか、髪の毛の先をくるくると遊び始めた。
肩下まで伸びた栗色の髪。
昔は黒髪ショートカットで、男子と間違えられる事も多かったな。
薄付きだけど、メイクもしている。
水嶋ほどではないけど、ブラウスの上からでもわかる胸の膨らみ、指先を彩るマニキュア、膝上のスカートからすらっと伸びる健康的な脚。
小学生の時は身長も俺より高かったのに、いつの間にか俺が見下ろすようになっていた。

そして、お化けを怖がる姿。


男勝りで強いと思っていた紺野だったけど、ちゃんと女の子になっていた。
ガキの時とは違う、“女の子”である事に気づき、急に意識し始めてしまう。

それまで、何も気にせず話していたのに、“女の子”だと思った途端に、どう接していいのかわからなくなってしまった。
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