秋の月は日々戯れに
「わたしは今、雰囲気であなたの温かさを感じています。……とっても、温かいですね」
しみじみと呟いた彼女は、そっと彼の肩に頭をくっつけて目を閉じる。
隣を見れば、穏やかな笑みを浮かべて目を閉じる彼女がいる。
このまま放っておいたら、知らぬ間にこの部屋の空気に溶けて消えてしまいそうな、そんな儚さがあった。
確かにここに居るのに、それでも彼女はどうしようもなく儚い。
透けた足が、青白い肌が、温度のない体が――確かに彼女は幽霊なのだと、彼に訴えかけてくる。
忘れそうになるたびに、忘れてはならないと脳が警告するように――。
なんとなしに、彼は手を伸ばす。
彼女は他のものには触れないけれど、彼にだけは触れる。
ならきっと、自分だって彼女に触れるはず。
伸ばした手が、その指先が、彼女の頬に届きそうになったところで、彼はピタッと動きを止めた。
もし、触れられなかったら……。
まるで空気を掴むように、伸ばした手が彼女をすり抜けてしまったら……――そう考えたら、怖くなった。
幸い、彼女はまだ目を瞑っている。