秋の月は日々戯れに
受付嬢の助けを求めるような視線に、俺にどうしろってんだよ……という意味を込めた視線を返していたら、誰にも見えない位置から、彼女がそっと彼の膝に手をのせた。
布越しに、じんわりと染み入ってくる冷たさ。
受付嬢だけでなく彼女まで、彼にこの場を打開する何かを、具体的には同僚を引き止める言葉を求めている。
そんなに期待されても困るのだが、こうなったらもう黙っているわけにもいかない。
彼は、諦めたように息を吐いた。
「ちょっといいか」
すでに立ち上がっていた同僚を呼び止めると、怪訝そうな顔が振り返る。
このあとはどうしたものか、考えていたわけではなかったが、とりあえず「話があるんだ」と続けてみる。
そして、話があるのは自分ではないので、迷わず受付嬢の方を手で指し示した。
「こちらさんが」
突然手で示されて、受付嬢の肩が大げさなほどにビクッと揺れる。
彼の手に釣られるようにして視線を動かした同僚は、その先で受付嬢と目が合うと、気まずげに視線を逸らした。