天神学園のお忍びな面々
「牡丹っ」

事が終わり、集まってワイワイ騒ぐ仲間達の輪の外にいる牡丹に、豆柴が駆け寄る。

「何をやっているですかっ!」

豆柴が咎めるのも無理はない。

牡丹は一升瓶を呷っていた。

「怪我をしているのにお酒とかっ!それ以前にここ学校です!」

「それがどうした」

牡丹は口を拭う。

「勝ち戦の後は固めの杯だ。こうやって戦の後の遺恨を流す。古来よりの武人の風習だ」

「阿呆ですか貴方はっ!出血が止まらないでしょうにっ!」

「おお…消毒がまだだったな」

牡丹は口に酒を含み、それを己の傷口に吹きかける。

沁みたのか、多少顔を顰める。

「何から何まで阿呆ですね貴方はっ!そんな雑な処置がありますかっ!」

グイと牡丹を引き寄せ、豆柴は傷口を診る。

こう見えても、番犬時代には任務後の仲間達の手当てをしていた。

典医並みの医療技術を持つリューク直伝で、切り傷刺し傷の処置など慣れている。

「…手際がいいな。夕城家かかりつけの医者になるか?」

「そうして欲しいなら、愛玩犬だの虜囚だの呼ばわりはやめるです」

豆柴は、フンと鼻を鳴らした。

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