One Night Lover
「私…どうかしてるよね?」

渉と2人でベランダに出てタバコをふかしながら
星空を眺めていた。

「別にどうかしてるってほどじゃないと思う。

足りない物を埋めたくなるのは当たり前のことだよ。

華乃は愛が足りてない。

それはあの婚約者の男のせいだと思うし…

華乃のせいでもある。

あの男が華乃の一番じゃないんだろ?

華乃がイキそうな時呼んでた…藤ヶ瀬部長?

その人が好きなんだ?」

渉がさっき華乃が呼んだ名前を口にした。

「好きなのか…わからない。

先輩に振られた日…あの人と勢いで寝たの。

初めてだったから…印象に残ったのかも…」

渉は華乃の肩を抱き寄せた。

「俺のせいだね?

あの時、華乃を抱けばよかったかな?

でも…あの時は華乃の真剣な気持ちを踏みにじりたくなかった。

華乃は純粋過ぎて…覚悟もなく手を出せなかった。

俺にもそのくらいの良心はある。」

渉はその後まさか華乃が知らない男と酔った勢いで一夜を過ごすとは夢にも思ってなかった。

「今は純粋じゃないからこんな風に抱くの。」

「そういう訳じゃないよ。」

渉は言葉で応える代わりにキスをした。

渉はこれでも渉なりに華乃をとても大切にしている。

そういう愛し方しか出来ない自分がもどかしかっだが
華乃が望んでくれる間はその役目を引き受けようと思っている。

渉は複雑な家庭で育ったせいか
本当は人の愛し方がよく分からない。

そのことに気付かないまま大人になり、
誰と付き合っても息苦しさを感じた。

渉はずっと自分を抑え、優しいフリをしてきた。

でも実はすごく残酷で冷たい自分がいる。

時にそれは暴力的な行動に変わる。

sexなどで理性が崩れるときも、
その歯止めが利かなくなった。

付き合った彼女たちは豹変する渉を受け入れられなかったり、自分が愛されてないことに耐えられずに離れて行った。

渉には今の華乃との関係が多分一番自分に合っている。

恋人でもなく、デートなど面倒なことをしなくても
自分の趣向を受け入れて抱かせてくれる華乃は渉にとって貴重な存在だった。




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