One Night Lover
華乃がタバコを吸っていると渉が部屋に差し入れを持ってきた。

「華乃、今日接待で使った店で寿司折買ってきた。

お腹空いてない?」

考えたら華乃はまだ夕ごはんを食べてなかった。

「食べるー。ありがとう。」

渉がタバコの匂いに気がついて窓を開けた。

「もしかしてやめられなくなった?」

「あ、タバコ?

うん…なんかね、口寂しい感じがして…。」

「彼は物足りない?」

「…そうなの…かな?」

渉が華乃の頬を撫でる。

華乃はわかっている。

渉と寝てもきっとこの物足りなさは埋まらない。

渉もそれをわかっているが
その衝動を止められない。

渉は今夜ただ華乃の身体が欲しくて寿司折を買ってきた。

「華乃…目を閉じて。」

「え?」

渉は自分の締めていたネクタイで華乃の両目を覆った。

「華乃が望む男を想像してごらん。」

華乃は藤ヶ瀬とのあの一夜を思い出していた。

「俺がその男になってあげる。どうして欲しい?」

華乃は渉の手を探し、指を絡める。

暗闇の中で華乃の両手を抑えつけ
乱暴に奪うように藤ヶ瀬に抱かれたあの夜が蘇る。

「先輩の好きにして。」

華乃は渉に乱暴に抱かれ、藤ヶ瀬の名前を呼んだ。

渉は他の男の名前を呼ぶ華乃に妙な刺激を受けて
快楽を得る。

そんな変わった空間を2人で愉しむと、
終わった後はきっとお互いに虚しさと罪悪感が押し寄せるだろう。

それがわかっているから
ずっとその中に居たいと思ってしまう。

渉との夜はいつも長い。







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