One Night Lover
壊れゆく心
菜那は聖司との生活に疲れていた。

聖司は菜那の自分に対する想いを
いつも竜と比べた。

「竜にはそんな風に言わないだろ?」

とか

「竜とどっちが上手かった?」

とか下らない事を比べて自分への愛を確かめようとする。

菜那は竜が嫌いになって別れたわけじゃないが、竜の父から受けた屈辱は早く忘れたかった。

その為には竜との思い出さえ、忘れてしまいたかったのだが、
聖司の方はいつまでも竜を忘れられなかった。

聖司はいつも竜に対するコンプレックスがある。

竜はずば抜けた容姿で知らない人は居ないくらいの大会社の後継者で
適当に遊んでいた割には聖司より勉強もスポーツも出来た。

何しろ竜はとにかく目立った。

みんなは竜の隣にいる聖司を
「竜の友達」として覚えた。

菜那もそれは同じで第三者からは
「竜の彼女」と呼ばれていた。

2人とも竜の前では霞んで見えたのだ。

聖司だってそこそこカッコよく、勉強もできた。

菜那至ってはクラスのアイドル的存在だったのに
竜と付き合うようになってみんなには竜の彼女としか見られなくなった。

それでも菜那は幸せだったが聖司は違った。

好きだった菜那も竜に盗られ、
聖司は竜のせいで劣等感というものを何度も味わった。

しかし竜は本当にいい友達で
竜自身を恨んだ訳ではなかったが
菜那と仲良くしているところを見るのだけは聖司には我慢出来なかった。



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