One Night Lover
最初に菜那に手をあげたのは
菜那がパート先の親睦会で男に送られて帰ってきた時だった。

「俺をバカにしてるだろ?

もし竜だったらお前はあんな男に送られてこなかったろ?」

菜那はその"もし竜だったら"という言葉にウンザリしていた。

いつもなら決して言い返さない菜那だったが
その日はお酒に酔っていて

「そうね、竜だったら聖司みたいに私を責めたりしないだろうし…」

と思わず口を滑らせた。

その瞬間、頰に苦い痛みが走った。

菜那はそんな聖司を見たことがなくて驚いて
そして怯えた。

「もう一度言ってみろ…もう一度言ってみろよ!」

怖くて涙が溢れて

「ごめんなさい。」

とすぐに謝ったが、聖司は菜那の髪を掴んでバスルームに連れて行くと頭から冷水のシャワーを浴びせた。

「酔っ払ったりするからだ!

二度とアイツの名前を口に出すなよ。」

その日から聖司は気に入らないことがあると
度々菜那に当たった。

菜那の身体には少しずつ色んな痣や傷が出来て
パートを休みがちになった。

ここを逃げ出さないといつか殺されてしまうと思ったが、
母親とは竜の件で今でも絶縁状態で
菜那には帰る場所もなかった。

菜那の顔からは笑顔が消え、
外にあまり出なくなった。

それを竜が知ったのは高校の時、同じクラスで菜那の親友だった原田麗奈に偶然街で逢った時だった。

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