イケメンエリート、愛に跪く



舟の話を局長は感慨深げに聞いている。


「どこの局も喉から手が出るほど、Canhuuとの契約を望んでいます。
他のアメリカの大手の配信映像会社と手を組んで大成功している日本の他局を見れば、それは一目瞭然ですからね」


ジャスは隣でいい人ぶった仮面をかぶって話している舟を見てほくそ笑んだ。
この子羊のような柔らかな舟様が、鬼と化すのも時間の問題だと思いながら…


「この局はここ数年で、恥ずかしいほど衰退しているのは事実です。
以前はどの局にも負けないストロングポイントがあって、視聴率にしてもスポンサーにしても左団扇の時代もありました。

でも、今は、何よりも新しい風を取り入れたい、それが生き残るのはもちろん、上にのし上がっていく起爆剤になると信じています」


舟は真っ直ぐに局長の顔を見ている。
局長の横に座る改革推進派の人間と保守派の人間も隈なく見つめた。


「僕はその局長の考えに賛同します。

でも、実は、一つだけ、この会社に対して不満があるんです。

僕がこれから話す条件を皆さまがチャンスと読むか無謀と考えるかは、それは皆様の考え次第ですが、僕にとっては大切な事なので、これを条件の一つに加えます」


舟のこの訳の分からない提案で、この場がざわつき出した。

ジャスはこの舟という男の恐ろしさはよく知っている。
このたどたどしい日本語と優しそうな表情に、皆、心を開き胸の内を明かしてしまう。
そこで相手に悪を見つけると、その蚊も殺せないような顔で、相手の急所にナイフをブッ刺すような男だ。

ジャスはその行く末が見えて、げんなりした。



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