お気の毒さま、今日から君は俺の妻
ふたりで手分けをして掃除を済ませ、休憩室へと向かった。
タカミネコミュニケーションズはどの階にも休憩室があり、いつでも利用可能だ。ちなみに総務部がある十五階の休憩室は、土足厳禁、大きなクッションやハンモック、そしてゴロゴロできるような仮眠スペースまである。飲み物の自販機も無料で利用できるので特別なお客様でもない限り、お茶を淹れる必要もない。
そして早い時間のせいか、見渡す限りどこにも人影はない。
「さ、ここにどうぞ」
「うん……」
澄花と珠美は自販機でコーヒーとココアを手に取って、窓の外を一望できるカウンター席に並んで座った。ここからなら休憩室の入り口からも遠いので、人がいない今なら、話を聞かれることもないだろう。
「えっとね、タマちゃん。相手のあることだし、私一人の問題ではないからあまり詳しくは言えないのだけれど」
「それは当然です。先輩の言える範囲でいいですよ」
珠美はうなずきながらココアの入った紙コップを口に運ぶ。
「じゃあーー」
澄花は姿勢を正し珠美の方を見つめた。
「実はね、私にはどうしようもできないことがあって困ってたら、目の前に助けてくれそうな人がいて」
「ふむふむ。なるほど」