お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「助けてもらうのになにかしら交換条件が必要だと思って」
「ふむ――ふ?」
「とりあえず自分を売ろうとしたら、じゃあ結婚って話になって……」
「ちょーーーーっ!!!」


 珠美はのけぞるように叫んで、ブルブルと頭を振ると、

「先輩っ、それって人身御供的な!? 借金のカタ的なっ!?」

 怯えた様子で頭を抱え、悶え始めた。

 彼女の脳内では、澄花の姿が貧しい農村の村娘に重なっていそうだ。


「待って、タマちゃん。私、別に借金のカタに売られたわけではないし、誰かに無理やりそうされたわけじゃないの。自分で選んでそうしたの」
「えーっ……」


 目をまん丸にして呆然とする珠美に、澄花は落ち着いた声でそう説明した。


「本当におかしな話だと思うだろうし、私も変だなって思ったし今でも思ってるけど……それでも私、とりあえずきちんと結婚生活を頑張ろうと思ってるのよ」
「先輩……」


 そう。龍一郎は変だ。

 確かに出会いは偶然だったかもしれないが――彼が『栫澄花』を知っていたこと、その後、彼が澄花の前に姿を現し、丸山夫妻の窮地を知っていたことも、なにかあるのだと思う。


< 113 / 323 >

この作品をシェア

pagetop