お気の毒さま、今日から君は俺の妻
なんだかいけないものを見てしまったような気がして、澄花は目を伏せる。
「今日から普通に仕事に行きます」
「――そうか」
どこか不満そうに聞こえないでもないが、さすがに毎日寝て暮らすわけにはいかない。
「そろそろちゃんとしないと、人として……まずいかと」
澄花は大げさに言っているのではない。
実際、結婚式が終わってからずっと、澄花は龍一郎と一緒にホテルで、とても贅沢で怠惰な日々を過ごしたのだ。
お腹が空けば、卵の焼き方まで好みの通りの食事がルームサービスで運ばれてくるし、昼間からジャグジーの中でシャンパンを飲んでいる間に、部屋がびっくりするくらい綺麗になっている。
(ここ何日か、どこの王侯貴族かって感じだったし……このままでは堕落してしまいそう……ううん、ダメ人間になってしまう!)
「ちゃんとしないと、か」
澄花の言葉を聞いて、龍一郎は微かに唇の端を持ち上げるようにして笑う。
「龍一郎さんはお仕事をされていたでしょうけど、私はなにもしていませんから」
実際、龍一郎はたまに電話がかかってきて、数時間姿を消すことがあったのだ。
「なにもしていないことはないだろう。私に抱かれていた。どんなふうに乱れたか、覚えてないのか」