お気の毒さま、今日から君は俺の妻
結婚を進めるうえで、龍一郎はまず澄花に生活をどうしたいか尋ねてきた。
澄花は、まずタカミネコミュニケーションズの仕事をもう少し続けたい、そして住まいに関して特に大きな希望はないが、小さな庭があれば嬉しいというと、龍一郎は少し考えて、『善処しよう』とうなずいた。
その結果が、葛城家の別邸の改装だった。
「――あの、今さらですが、ご両親は改装にご了承いただけたんでしょうか。由緒正しい古いお屋敷だったんでしょう?」
「もちろんだ。そもそもあの屋敷は両親が本家に移るにあたって私が相続したものだから、好きにしていいということになっている。それに澄花とふたりで住むと話したら、使ってもらえるなら嬉しいと、喜んでいたよ」
「そうですか……よかったです。ご両親にお会いしたのもまだたったの三回だし……ちゃんとお話しできてなかったので」
それを聞いて澄花はホッと胸を撫でおろした。ちなみに龍一郎の両親と会った三回というのは、挨拶、結納、結婚式の三回だけだ。
たったひと月で息子の結婚を許す親がいるのだろうかと澄花は不思議で仕方なかったが、最初のあいさつで鎌倉の本家に行ったときは下にも置かない歓迎ぶりで、ひどく驚いたものだった。