お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 都内の高級住宅地にある別宅は、現在の葛城家当主である龍一郎の両親が長らく住んでいたのだが、当主が代替わりした五年前、両親は鎌倉の本家に移り、それから龍一郎ひとりで住んでいたらしい。
 とはいえ、敷地面積八百平方メートル、屋敷は一階、二階、合わせて四百平方メートルもある木造の二階建ての洋館は、ひとりで住むには広すぎて、必然的にホテル住まいになっていたとか。

 そこで澄花の希望を聞いた龍一郎は、庭木も含め、邸宅内の全面改装に踏み切ったのだった。


「とりあえず庭も、屋敷の中の改装も、古い付き合いのある業者に頼んだから心配はないと思うが。なにかまた気づくことがあったら言ってくれればいい」
「あの……いろいろご面倒をかけて申し訳ないです」


 小さな庭があれば、いろいろと庭木のお世話ができて楽しそうだと思ったのが始まりだ。ここまで大事になるとは思わなかった澄花は、横たわったまま澄花を見上げる龍一郎に頭を下げる。


「面倒?」

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