お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「……澄花」


 なのにまた名前を呼ばれて、そのまま耳たぶが噛まれる。
 歯を立てられ、吐息が注ぎ込まれる。


「も、もう、だめですったら……」


 彼の大きな手が澄花の胸を隠していたシーツをはぎ取ろうと動き始めて、慌てて厚い胸板に手を乗せ、押しやろうとするが、

「かわいい君がいけない」

と、龍一郎は引いてくれない。

 なにかとかわいいと口にする龍一郎だが、澄花はたまったものではない。かわいいと異性から言われ慣れていないので、どうしても緊張してしまう。


「かわいいとか、そういうこと言わないでください」
「なぜ」
「なぜって……」


(――なぜだろう?)


 一瞬まじめに考えたが、よくよく考えるでもない。


「恥ずかしくてどう反応していいかわからなくなるからです」


 そうきっぱりと言い返すと、龍一郎がほんの少しだけ空気を緩めるようにして目を細めた。


「だから……そういうところがかわいいんだ」
「えっ?」
「かわいい。たまらない。君の素直な言葉を聞いていると、ますます愛しさが増して……困る。君を私で全部染めてしまいたい……君のすべてを愛したい……」


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