お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 愛することだけを望み、愛されることを拒む龍一郎――。
 そう、澄花が知りたいのは、“それを選択する龍一郎の気持ち”だった。


(なぜなの? どうしてそんなことを私に望むの?)


 本気で知りたいと思う。

 だが焦って答えを出すのは止めようと、澄花は心に決めていた。


(私だってまだどうしたらいいのかって手探りなのに、自分のことを棚に上げて、龍一郎さんをあれこれせっついて、無理に答えを聞き出すのは違う。つい目の前のことばかり気になってしまうのが、私の悪い癖だけど……まずは少しずつ、龍一郎さんとの生活を大事にして、私も気持ちの整理をしながら、歩み寄れたらいい……)


 まだ心が通っているとはとてもいえないが、澄花は龍一郎の妻になったのだ。

 結婚したからはい契約完了、あとは知らぬ顔とはいかない。なぜならこれは自分の人生でもあるし、なおかつ龍一郎の両親や、丸山夫婦など、純粋に澄花と龍一郎の結婚を祝福してくれている人がいるのだ。
 龍一郎という謎だらけな男と向き合うのは、なかなか骨が折れるに違いないが、七年間、きちんと人と向き合い、他人の気持ちを考えて生きることを放棄していた澄花にとって、この契約結婚は、新しく生きるきっかけになったことは間違いない。

 澄花が珠美に向かって『きちんと結婚生活を頑張ろうと思っている』と言ったのは、そういう気持ちからだった。

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