お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「聞こうと思って聞いていたわけじゃない。俺が寝てるところにお前たちが来て、勝手に話し始めたんだ」
高嶺は憮然とした表情になりながら、体の前で腕を組み、澄花を見下ろした。
「あの……」
(いったいどこまで聞いたんだろう……)
契約結婚だのなんだの、かなりきわどいことを口にしたことを思いだして、澄花は少しばかり不安になった。
だが今さら隠しても仕方ない。思い切って自分から口にした。
「社長、私仕事は続ける気でいるのですが……駄目でしょうか」
「駄目とは?」
「だから、その……社長がお聞きになったように、ちょっと変わった形で結婚しまして……」
今のところなにか問題を起こしたわけではないし、タカミネコミュニケーションズ自体は先進的な会社だとは思うが、やはり気になってしまう。
「別にいいんじゃないのか?」
「えっ」
「どのような形で結婚したのかなんて大した問題じゃないだろう。これから残りの人生のほうがずっと長い。それに俺だって似たようなーー」
そう高嶺が言いかけた瞬間、
「あーっ、ここにいた!」
バタンとドアが開いて、今度はきっちりと三つ揃えのスーツに身を包んだ天宮が姿を現した。